研究概要 |
本研究課題では、初年度(平成14年度)にリアルタイムPCRを購入し、in vivoおよび二次口蓋突起の器官培養系でMEE細胞の挙動と関連遺伝子群の発現量の推移を検討した。ICRマウス胎仔の口蓋突起を用いた培養実験では、口蓋突起同士の接触培養,非接触培養、MatriGelとの接触培養、異種組織(口唇や舌)との接触培養を行った。MEE細胞の消失までに要する時間枠はMEE細胞の分化段階に依存しており、E13.0培養開始の場合では48時間を要したが、E14.0培養開始では18時間で消失が完了した。非接触培養系での血清添加やMatriGelとの接触培養系では、MEE細胞の消失に遅延効果が認められた。最終年度(平成15年度)では、口蓋突起の接着癒合に関る分子機構を探る目的で、口蓋突起試料をヒアルロニダーゼ前処理、あるいはプロテオグリカン合成阻害剤(MUβX)の共存下で培養実験を行い、MEE細胞の接着には細胞外基質の主成分であるプロテオグリカンが重要であることを再確認した。これまでの実験結果から、MEE細胞は口蓋形成初期の段階から消失に向けて方向付けられており、その進行速度は外部環境で制御を受けていることが示唆された。リアルタイムPCRを用いた検索から、このMEE細胞の運命を決めるうえで、細胞運動能を制御するRhoファミリー関連遺伝子が関っていることが判明した。これまでの解析結果として、口蓋形成時期に依存せず構成的に発現を示した遺伝子群(n-wasp, lim-kinese2,pl160rock, ezrin, profilin1)と、発生時期特異的な発現を示す遺伝子群(cdc42,snail, lutheran)とが区別された。特に、MEE細胞接着期でのcdc42の発現誘導、上皮間葉転換に関連してsnailの発現上昇とlutheranの発現減衰が確かめられた。
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