1.骨芽細胞分化におけるカドヘリン-11の機能 カドヘリン-11の骨芽細胞分化における機能を調べるため、カドヘリン-11ノックアウトマウスの頭蓋骨発生について解析した。-/-マウスでは、予定前頭骨縫合線間充織に通常では起こり得ない異所的な島状骨が認められた。これは、縫合線間充織が未分化性を維持できず、骨芽細胞へと分化してしまったためであると考えられた。また-/-マウスでは、左右の前頭骨間が+/+マウスに比較して大きく広がっており、骨芽細胞マーカーであるオステオポンチンの発現が減少していた。この結果は、骨芽細胞前駆細胞から骨芽細胞への分化が遅延したことを示している。N-カドヘリンとカドヘリン-11の二つのカドヘリンが発現することの意味を調べるために、二つのカドヘリンを発現させた繊維芽細胞株L-N-cad/Cad-11を作製し解析した。これらの細胞は細胞間接着能力を有しており、更に細胞密度依存的なALP活性を示した。遺伝子発現をRT-PCRにより調べた結果、ALP、FGFR2の発現上昇が認められた。ALP、FGFR2の頭蓋骨発生での発現様式はN-カドヘリンとカドヘリン-11のそれに酷似しており、in vivoにおいても二つのカドヘリンによる細胞間接着は、ALP、FGFR2の発現を誘導していることが示唆された。 2.我々は成体において、歯根膜、骨膜に特異的に発現する分子量約90kDの分泌蛋白をペリオスチンと名付け、メカニカルストレスに関与する分子として、その発現と機能解析を行ってきた。ペリオスチンはβigh-3と共にファシクリンIファミリーに属し、4つのリピートドメインを有するなど特徴的な構造をしている。 我々はこのペリオスチンの機能を特定するためにノックアウトマウスを作成し、そのフェノタイプを解析した。その結果、胎児期にはその異常は観察されないが、12週令では、歯根膜の改変異常が見られ、その結果、歯が放出できなくなり、エナメル質が異常をきたしていることが明らかになった。この驚くべき結果はメカニカルストレスに応答できないマウスの作成に成功したことを意味している。
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