研究概要 |
PRIP1[新規Ins(1,4,5)P_3結合蛋白質]は、我々が精製・遺伝子クローニングしたホスホリパーゼC(PLC)-delta1類似蛋白質であるが、この分子はPLC酵素活性を持たない。そこでこの分子の機能を明らかにするために、酵母ツーハイブリッド系を構築してPRIP1に相互作用する分子を検索し、GABARAP(GABA_A receptor gamma-2 subunit associated protein)を見い出した。GABARAPはPRIP1のEF-hand領域に結合し、その結合はGABARAPのGABA_A受容体gamma-2サブユニットへの結合を抑制した。引き続きPRIP1のノックアウト(KO)マウスを作製しGABA_A受容体情報伝達経路に及ぼす影響を調べた。PRIP1 KOマウスの海馬細胞を用いwhole-cell patch記録法でGABA誘発性Cl電流のZn^<2+>イオンによる効果を調べた結果、KOマウスでは、Zn^<2+>によるCl^-電流の抑制効果が減弱化していた。そこで、gammaサブユニットに作用点をもつベンゾジアゼピン系薬剤に対する影響を調べた。KOマウスの海馬細胞にジバゼパムを作用させたところGABA誘発性Cl^-電流の増強効果が抑えられた。さらに、抗不安効果を評価するプラス迷路を用いた行動解析実験においてもジバゼパム作用効果が減弱していた。これらの結果は、PRIP1 KOマウスではGABA_A受容体のgammaサブユニットを介した情報伝達経路が正常に機能しない事を示唆するものである。新しいIns(1,4,5)P_3結合性蛋白質(PRIP1)は、GABA_A受容体情報伝達経路においてGABAシグナルを調節する新しい分子である可能性があり、現在その詳しい分子メカニズムの解析を進めている。
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