研究概要 |
歯牙形成を制御機構する遺伝子を網羅的に解析、同定するため、本研究では胎児マウス顔面骨からレトロウィルス系のcDNAライブラリーを作製し、発現スクリーングを行った。これをC3H10T1/2細胞に遺伝子導入し、G418により安定発現株を作製した。そしてBMP-2やデキサメサゾン等で骨芽細胞に分化誘導させた際に、アルカリフォスファターゼ活性を亢進させる遺伝子としてNotch1を同定した。Notch1はそのリガンドであるDelta1,Jagged1とともにマウス大腿骨に作製した骨欠損部の修復過程で強く発現していた。そこで骨芽細胞の細胞分化に及ぼす影響をC3H10T1/2,MC3T3-E1,C2C12等の細胞を用いて検討した、野生型Notch1とその活性型細胞内ドメイン、Delta1,Jagged1を一過性過剰発現させると、培養細胞のBMP-2によるALP活性の上昇を増強した。Real-time PCRによる検討でALP以外にもosteocalcin,osterix,runx2等の発現も同様に増強させた。またDelta1-,Jagged1-Fcリコンビナント蛋白をprecoatした場合にも同様な結果が得られ、長期培養では石灰化を誘導し、移植実験ではBMP2による異所性骨化を促進した。一方、インヒビターや、ドミナントネガティブ型の細胞外Notch1の過剰発現、あるいはNotch1 siRNA等を用いた場合は、BMP-2によるこれら因子の発現やALP活性は抑制された。Notch1とBMP2のクロストークメカニズムを各種プロモーター活性や標的遺伝子発現の誘導から検討した。その結果、機能的Notch1のシグナルはBMP2のシグナル伝達に必須であることが明らかになった。
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