研究概要 |
薬物の副作用として発現するオーラルジスキネジア発症機構解明の目的で,大脳基底核機能におけるドパミン,アセチルコリン,アンジオテンシン,セロトニン各受容体の役割,さらに受容体の相互作用様式について研究を行った。 ラットの顎運動発現に関する研究では,小児多動症のモデルとされる高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて実験を行い,線条体腹外側部にドパミンD_1受容体アゴニスト(SKF38393)とD_2受容体アゴニスト(quinpirole)を併用投与して発現する顎運動が,SHRにおいては著しく低下していることが明らかとなった。また,アセチルコリン受容体アゴニスト(carbachol)の投与によって発現する顎運動について検討した結果,ドパミン受容体刺激の場合と同様の結果となった。以上の結果から,SHRにおいては線条体腹外側部のドパミンD_1/D_2受容体およびアセチルコリン受容体の機能が低下していることが示唆された。昨年度に本補助金にて行った実験で確立した,ホールセンサを用いた非拘束下でのラットの顎運動測定法を用いた研究では,線条体腹外側部におけるアンジオテンシン受容体の機能について検討し,アンジオテンシンAT_1受容体を刺激することによってドパミン受容体刺激誘発顎運動が増強するという結果が得られた。マウスにおける実験では,ドパミンD_1受容体の多様性と顎運動発現の関連性について検討し,D_1様受容体にはAC系とPLC系を介して機能を発揮するものがあり,それぞれがマウスの顎顔面領域の運動に対して固有の役割を担っていることが示された。ラットの回転行動に関する研究では,側坐核shellにおけるセロトニン受容体の役割について検討し,5-HT_<1B>受容体は単独では回転行動を発現しないものの,5-HT_<1B>受容体アゴニストおよびアンタゴニストのいずれもドパミンD_1/D_2受容体刺激誘発回転行動を抑制することから,側坐核shellの5-HT_<1B>受容体は,同部位のドパミン機能を調節する可能性が示唆された。脳微小透析法による研究では,内因性オピオイド受容体アゴニスト候補物質のendomorphin-1(EM-1)およびendomorphin-2(EM-2)の側坐核ドパミン遊離調節機構を検索した。その結果,EM-1誘発ドパミン量増加は,一部がオピオイド受容体を介しているのに対し,EM-2誘発ドパミン量増加はオピオイド受容体を介していない可能性が示唆された。
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