研究概要 |
Temporomandibular disorder(TMD)における咀嚼筋の痛みでは,持続性の弱い収縮が問題となる.弱い収縮では,筋肉内に恒常性を維持するに十分な血流は供給されているにもかかわらず,疲労や痛みが発生する.ここでは筋肉の浮腫が強い関係を示す場合があるとされるが,この浮腫の状態を含め,血流動体を把握することで,病態を評価する方法を確立するのが本研究の目的である.本研究の特徴は,そのために無侵襲脳内酸素飽和度モニターと超音波装置を用いることにある.平成14年度は,無侵襲脳内酸素飽和度モニターを咬筋および側頭筋へ応用する方法を検討するとともに,同装置の基本性能を把握し操作に習熟した.センサーの貼り付け部位は前後的にはほぼ咬筋の中央部で,上下的には中央よりやや下方が適切であるとの結果を得た.側頭筋では胸骨弓上方に斜めに貼付するのが適切であった.この方法によって20名のボランティアを対象として,咬筋噛み締め時の咬筋の酸素飽和度の変化を計測し,血圧や脈拍などの変化との関係を分析した.その結果,酸素飽和度は最大の力での噛み締め時には減少し,噛締めが終了すると回復することが明らかとなった.また,これらの変化は血圧や脈拍と一定の関係があることが確認された.次に,臨床応用としてTMD患者を対象に咬筋の超音波像の特徴的所見を明らかにした.30名のTMD患者と60名の健常ボランティアと比較して,咬筋および側頭筋の厚み,筋内の筋膜に相当する内部のechogenic bandなどについて検討した. その結果,TMD患者で咬筋の厚みが厚く,内部のechogenic bandは減少していることが明らかとなった.
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