象牙質接着性レジン材料は齲蝕除去後の歯冠修復に用いられているばかりでなく、近年では直接覆髄などにもその応用の範囲を拡大し、象牙質を介することなく直接その溶出成分が歯髄組織、歯周組織あるいは根尖歯周組織に作用することが考えられる。細胞致死毒性試験ではほとんど問題ないといわれている象牙質接着性材料の溶出成分であるが、作用した各種細胞の分子レベルでは様々な変化を引き起こしている可能性がある。そこで本研究では4-META/MMA-TBB resinの生体内溶出成分が培養細胞の増殖・分化機能に及ぼす影響について分子生物学的アプローチを中心として解析を行った結果、以下のことが解明できた。 1.4-META/MMA-TBBレジンを重合させて作成したレジンプレート上で、ラット歯髄株化細胞を培養した場合、4-META/MMA-TBBレジンが細胞増殖機能およびアルカリフォスファターゼ活性に及ぼす影響は少ないことが示唆された。 2.4-META/MMA-TBBレジンプレート上でラット歯髄細胞を培養した場合、ALP、Coll(I)、OC、BMP2のmRNA発現に対する影響は少ないと考えられた。 3.4-META/MMA-TBBモノマー+キャタリスト成分は10^<-1>%以上の濃度でα-MEM培地に混合した場合、ラット歯髄系株化細胞に対して、細胞増殖能を抑制する細胞毒性を有すると考えられた。 4.4-META/MMA-TBBモノマー+キャタリスト成分は10^<-1>%以上の濃度でα-MEM培地に混合した場合、ヒト好中球系株化細胞に対して、細胞増殖能を抑制する細胞毒性を有すると考えられた。
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