研究概要 |
Lucifer-Yellowを用いた形態学的研究と電子顕微鏡学的手法により,(1)象牙芽細胞およびその下層の細胞間にはdye-couplingが存在することがわかった.そして,(2)その結合は電子顕微鏡学的にはgap-junctionの存在として証明された.その後,ナイスタチンを用いてdual whole cell patch-clamp法をヒト新鮮単離象牙芽細胞に応用した.その結果,(3)細胞間の電気couplingが確認され,イオンや低分子が細胞間を両方向性に通過できることが明らかになった.(4)ただし,象牙芽細胞間では電位関門は偏りのない両方向性であったが,(5)象牙芽細胞と下層細胞間の関門は,通過しやすい方向としにくい方向が存在した.(6)また,象牙芽細胞は細胞集団内の細胞数が増すほど,時定数が増加することから,細胞同土が電気的な集合体を形成していることが明らかになった. 次に,機械的な変形が象牙芽細胞層の細胞のイオン膜特性に与える影響を電機生理学的に調べた.象牙芽細胞間および象牙芽細胞と下層細胞間には電気的結合の確認後,ヒト小臼歯あるいは第3大臼歯から新鮮単離した細胞に対して,顕微鏡下において尖端の丸いガラス毛細管あるいは膜にGΩシールしたピペットを吸引することで,膜に対する変形を加えた.(7)この機械的膜変形によって,イオンチャンネルの開閉には増加・減少ともに観察されなかった.また,(8)上記の細胞間の電位関門の両方向性の偏りも機械的変形で影響を受けなかった. こうしたことから,象牙芽細胞層にはgap-junctionを介した広い細胞間集合体が存在する.しかし,このcell-to-cell連絡は,象牙質感覚を起こす動水力学的な象牙細管内容液の動きで引起されたり,修飾されたりしないと考えられる.
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