研究概要 |
ヒト新鮮単離歯髄細胞を用いて以下のことを明らかにした. ●whole cell patch-clamp methodを応用して電子顕微鏡学的に象牙芽細胞間および象牙芽細胞とその下層の細胞間にdye-couplingを示すgap-junctionが存在することを証明した. ●dual voltage clamp法を用いて象牙芽細胞間および象牙芽細胞とその下層の細胞間にelectrical couplingが存在しイオンや低分子が行き来できること,象牙芽細胞間には電位関門には方向依存性がないが,象牙芽細胞と下層細胞間には方向依存性があることを明らかにした. ●先端の丸いガラス毛細管およびパッチクランプ用電極の吸引により,象牙芽細胞膜に加えた機械的変形によって,象牙芽細胞間および象牙芽細胞と下層細胞間のconductanceは影響を受けなかったことから,象牙質感覚を惹起するとされる象牙細管内容液の移動に起因する動水力学的な力によって細胞間機能結合は変調されている証拠認められなかった。 ●矯正学的に抜歯予定のヒト小臼歯から単離した若い象牙芽細胞(12.6±0.9yr)の方が成熟した(20.9±3.9yr)象牙芽細胞に比べて,統計学的に有意に,細胞径(長軸方向)が大きく,象牙芽細胞間においても象牙芽細胞と下層細胞間でも細胞間電気conductanceが大きいことが明らかになった.こうした事実は若い象牙芽細胞が成熟した象牙芽細胞に比べて,高い代謝活性と刺激感知・変換・伝達機能を有していることに関連していると考えられた.
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