研究概要 |
根尖性歯周疾患には、根管内の細菌やその産生物の侵襲に対して根尖部の歯周組織で営まれる免疫応答が深く関与する。また、樹状細胞は生体内で最も強力な抗原提示細胞として、抗原刺激に対する免疫応答の発動、あるいは免疫応答の質の決定に重要な役割を演じることが知られている。樹状細胞の表面に発現される一連の免疫機能分子群は、樹状細胞とTリンパ球との間の相互作用(抗原提示)におけるTリンパ球への情報伝達に深く関与することが近年注目されている。 ところが、根尖性歯周炎あるいはその前駆疾患と位置づけられる歯髄炎などの歯性炎症における樹状細胞の挙動については、依然として十分な検索は行われていない。そこで本研究は、樹状細胞およびそれらが発現する免疫機能分子が根尖性歯周疾患の病態機序にどのように関与しているかを、免疫組織化学的手法を用いて明らかにすることを目的とするものである。 本年度は、正常ラット歯根膜、もしくはラット臼歯を露髄させ開放のまま放置することにより誘発した実験的根尖性歯周炎を検索の対象として,樹状細胞マーカーに対する電顕免疫組織化学的を実施するとともに、これらを発現する細胞の局在・密度の経時的推移を検索した。すなわち、モノクローナル抗体OX6(抗MHCクラスII分子)、8A2(CD11c)、ED1(ライソゾーム系小器官を認識)、OX62(樹状細胞、γδT細胞を認識)を用いて樹状細胞の超微形態学的同定と分布密度の定量を経時的に実施した。その結果、正常ラット歯根膜に分布する樹状細胞が形態・樹状細胞マーカー発現状況の両面で多様性を示すこと、実験的根尖性歯周炎の拡大期ではマクロファージ様細胞が優位であるものの早期より未熟な樹状細胞も出現すること、及び、これが慢性期へと移行するに従い、成熟した樹状細胞様の超微形態を呈する細胞が優勢となることを観察した。
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