研究概要 |
根尖性歯周炎の病変部における樹状細胞の役割を追究することを目的とし、ラット臼歯を露髄・開放のまま放置することにより誘発した実験的根尖性歯周炎を試料として、樹状細胞の超微形態、分布密度および免疫機能分子発現状況の経時的変動を電顕免疫組織化学的に検索した。 その結果、最も病変拡大傾向が明瞭な誘発14日経過後(拡大期)では、MHCクラスII分子陽性細胞の大多数はマクロファージと同定され、樹状細胞は少数が存在するのみであった。一方、誘発28日経過後(慢性期)では、破骨細胞が減少し病変の拡大がすでに停止していたが、この時期では特に病変の外周部において、MHCクラスII分子陽性細胞の多くが樹状細胞と同定されるとともに、これらがMHCクラスII分子陰性のリンパ球と接触像を示すことも観察された。これらの樹状細胞は、拡大期では細く短い細胞突起を有する小型で細胞小器官の発達に乏しい細胞として観察されたが、慢性期では長い樹状突起を有する大型の細胞として同定された.さらに慢性期では、これらの樹状細胞がCD11c、OX62に対する免疫反応性と超微形態より二種の亜群に分類されることも明らかとなった。すなわち、上述の長い細胞質突起を有する大型の細胞のほとんどはCD11c陽性を示したが、OX62陽性の細胞はしばしば小型楕円形の胞体を有し、突起も短く少数が存在するのみであった。 以上より,実験的根尖性歯周炎の病変部では、樹状細胞が組織内での分化・成熟による多様性を示しつつ主として病変外周部に偏在し,抗原提示細胞として局所の免疫反応性を高めることを通じて、慢性期における免疫応答の緩徐かつ持続的な活性化に関与している可能性が示唆された.
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