研究概要 |
採取した2級セラミックインレー臨床症例のレプリカを用いて,フラクトグラフィ解析およびセメントの摩耗量をレーザー変位計によって測定したところ,機能咬頭側で非機能咬頭側と比べて有意に大きな摩耗量を認め,さらに摩耗量の変化としてのセメントラインの経時的劣化は三段階の劣化様式を示した。第一期はセメントの摩耗による垂直方向の急速な劣化の進行,第二期はセラミックスの辺縁から内部に微少な亀裂が進展していく緩やかな劣化,第三期は,第二期までのセメントの摩耗で露出した辺縁が微小破折を繰返すことによって,明らかな辺縁劣化へと進行する時期であった。 続いてin vivoでのセメントラインの劣化の3つのステージをシミュレートできるin vitro辺縁劣化試験法および辺縁劣化非破壊的定量法を考案し,レジン合着材の疲労劣化試験とセメントラインのフラクトグラフィ解析を実施した。本試験法にてin vitroの辺縁の疲労劣化を検討したところ,セメントラインの幅が100μmでは200μm以上の場合に比べて,劣化が有意に少ないことが示され,100μm以下のセメントラインを実現することが辺縁劣化を防止し,セメントラインを強化するのに有効であることが示唆された。さらに,第3ステージではインレー辺縁に存在する微少亀裂が急速に成長し,辺縁破折,セメントライン上部の拡大,急速な辺縁劣化をきたすことが明らかになった。また,探針でのセメントラインの検査では,先端径の大きさ(120μm〜500μm)が水平ギャップ幅の検知に有意に影響を与え,170μm〜200μmの先端径の探針を用いることで,目標とする100μm前後のセメントラインをmodified USPHS criteriaのAlfaとBravoの判定境界とすることができることがわかった。 以上のように,本研究は,口腔内での審美的インレー修復の経時的劣化様式を明らかにし,さらにその劣化様式をシミュレートできるin vitroでの辺縁劣化非破壊的定量法を考案し,さらにフラクトグラフィ解析からセメントラインの強化と経時的辺縁劣化の早期検知についての提言を行った。
|