研究概要 |
本年度は,1.既存の逆根管充填材料の溶出成分の検索と骨芽細胞様細胞の活性に及ぼす影響,および,2.ハイドロキシアパタイト/可溶性リン酸カルシウム(HAp/SCaP)複合体の作製と溶解性の検索を行い,以下に示す知見が得られた. 1.既存の材料,すなわち,レジン系2種,レジンモディファイドグラスアイオノマー系セメント(LC)1種,および酸化亜鉛ユージノール系セメント(EBA)1種を細胞培養培地に浸漬すると,LCにおいて浸漬3日目までの急激なpHの低下とその後の回復が観察されたが,その他の材料においては変化を認めなかった.高速液体クロマトグラフィーによる溶出モノマーの解析により,LCにおいて高濃度のHEMAの溶出が認められた.骨芽細胞様細胞MC3T3-E1培養系を用いた細胞接着試験によると,EBAとLCへの付着細胞数は他の2種よりも少なく,接着,増殖に対する抑制が認められた.アルカリフォスファターゼ活性の測定によると,レジン系のコンポジットレジン,MMAレジンにおいては抑制がなかったが,他の2種においては対照に比べ有意な抑制が認められた. 2.市販のHApブロックを真空環境下で熱処理し,相分解により得られた溶解性の高いリン酸カルシウムとHApコアからなる複合材料,HAp/SCaP複合体を試作した.酸性(pH4.0)あるいは中性(pH7.2)環境下での溶解性を,浸漬時間を変えて,原子吸光分光光度計により溶液中のCa濃度を指標に検討したところ,酸性条件においては,浸漬開始1時間後までに急速なCaの溶出を認めたが,それ以降の溶出は緩徐となった.中性条件においては,15日間の浸漬中,ほぼ一定の持続的な溶出が認められた. 次年度以降は,さらに既存材料についての検索を行う一方,HAp/SCaP複合体の有用性をin vitroおよびin vivoにおける試験により検討する予定である.
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