研究概要 |
今年度は,まず試作ハイドロキシアパタイト/リン酸カルシウム(HAp/SCaP)複合材料の表層および粒界に,α-リン酸三カルシウム(α-TPC)とリン酸四カルシウム(TetCP)が析出していることをエックス線解析により確認した.また,試料を培地に浸漬し,走査電子顕微鏡(SEM)による溶解性の検討を行ったところ,3日目には表面の溶解による粗造化が進むこと,およびその程度が試料の熱処理時間に依存していることが確認された.そこで,1.培地へのα-TPCおよびTetCPの添加,2.HAp/SCaP複合材料より溶出した成分,それぞれが骨芽細胞様細胞MC3T3-E1に与える影響をin vitroにおいて検討した. 1.α-TPCあるいはTetCPを1μMあるいは10μM添加した培地中でMC3T3-E1細胞を培養し,プレートへの付着数とアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の測定,RT-PCR法を用いた骨分化マーカーの検索,および石灰化物形成について検討を行った.その結果,付着細胞数には対照との間に有意差が認められなかったが,α-TPC, TetCPの添加群では3日後までALP活性が上昇し,逆に7日後には低下することがわかった.また,骨分化マーカーの検索では,α-TPC, TetCPの添加によって,type I collagen発現の増強が認められ,さらに,10μMのリン酸カルシウムの存在が石灰化物形成を促進することわかった. 2.HAp/SCaP複合体からの溶出液を用いて1と同様の検討を行ったところ,ALP活性とtype I collagen発現の増強ならびに石灰化の促進が,10時間熱処理を施した試料において顕著に認められた.
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