研究概要 |
昨年までの研究により,ハイドロキシアパタイト(HAp)を真空環境下で熱処理することにより試作したHAp/可溶性リン酸カルシウム(HAp/SCaP)複合材料はHApと比較して溶解性が高く,また,その溶解物により骨芽細胞様細胞MC3T3-E1の分化と石灰化が促進されることがin vitroにおいて確認された.そこで本年は,in vitroにおけるHAp/SCaP複合材料への細胞付着性を緻密性HApから作製した試料を用いて検索し,さらに,多孔性HApから作製した試料をビーグル犬の抜歯窩に埋入して,in vivoにおけるHAp/SCaP複合材料に対する組織反応について検討した. SEMによる観察および付着細胞数の計測を行って,MC3T3-E1細胞の付着性を調べたところ,培養7日目以降において,非熱処理HAp試料や1時間熱処理試料と比べ,10時間熱処理試料では有意に多くの細胞の付着と明らかな表面の粗造化が認められた. 抜歯窩に埋入したHAp/SCaP複合材料周囲組織の観察によると,埋入1,3ヵ月後とも,いずれの熱処理試料においても良好な骨の再生が認められた.また,3ヵ月後には,試料深部におよぶ骨様組織の侵入が観察されたが,熱処理時間による差は認められなかった.しかし,非熱処理HAp試料の場合,骨様組織の試料内部への侵入は認められず,再生は表層にとどまっていた. 以上の結果より,試作HAp/SCaP複合材料は,in vivoでの溶解性に優れ,HApと比較して骨新生に有利であることが証明された.今回試作した,既存のHApを熱処理により改質して作製するHAp/SCaP複合材料は,欠損部の形態に応じた調整が可能であり,骨欠損部位の早期の骨組織再生を誘導するとともに,コア部分のHApにより線維性組織侵入の防止効果もあると考えられ,歯根尖切除法などの歯内外科処置において有益な材料となる可能性が示唆された.
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