研究課題/領域番号 |
14370627
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
本郷 敏雄 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究所, 助教授 (60142444)
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研究分担者 |
安増 茂樹 上智大学, 理工学部, 助教授 (00222357)
喜多 和子 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (80302545)
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キーワード | 歯科用レジン / 溶出 / ビスフェノールA / 細胞培養 / 遺伝子導入 / メダカ / 変異原性 / 生物学的試験法 |
研究概要 |
本研究は歯科用有機材料由来の化学物質並び唾液に浸漬したそれら硬化体由来の化学物質を同定・定量する簡便な分析法の開発、エストロゲンレスポンシブエレメント(ERE)領域を含む遺伝子片に蛍光色素であるeGFP遺伝子(ERE-eGFP)をレトロウイルス発現ベクターで作成し、ヒト培養細胞に導入した新規エストロゲン高感受性培養細胞検出系の開発、スケルトンメダカ(STL2)にERE-cGFP遺伝子を導入することにより、エストロゲン高感受性蛍光遺伝子を導入したSTL2による検出系の開発及びヒト培養細胞を用いて極微量の化学物質が有する変異原性を超高感度で検出するシステムの開発を目的とした。その結果、唾液に浸漬したBis-GMA系コンポジットレジンからのビスフェノールA(BPA)溶出は検出限界以下であったが、Bis-GMA加水分解体が顕著に検出された。用いた分析方法では直接、唾液を定量するため夾雑物の除去操作は不要ではあるが、親水性物質の分析には若干の改良が必要であった。培養細胞を用いたエストロゲン様物質の高感度検出法の確立のため、メダカのEREを恒常的に発現するヒト細胞株を作製するため、レトロウイルス発現ベクターであるpLNCXのプロモーター部分にERE-eGFPを組み込んだ。これをpT67細胞に遺伝子を導入し、HeLa細胞に感染させ、ERE-cGFP遺伝子を安定に発現し続ける細胞のみを選別したところ、18クローンの遺伝子導入された細胞を得ている。現在、この細胞を用いてエストロゲンやBPAに対して高感度で遺伝子発現(GFP蛍光)を示す細胞株を選別中である。STL2に、コリオジェニン(Chg)遺伝子上流域とGFP構造遺伝子を連結したレポーター遺伝子を導入し、遺伝子導入個体を作製した。遺伝子の導入効率を初期発生で確認するため、初期に発現が観察されるグロビンのレポータ遺伝子(Gb-RFP)とChg-GFPの融合遺伝子を作製しメダカ胚に顕微注入をおこない、Gb-RFPの発現を確認し、引き続き飼育、観察を続けている。極微量化学物質の変異原性検出システムに、ヒト培養細胞RSaの有用性について検討したところ、RSa細胞は、高頻度の突然変異誘導が可能であり、PCRとdifferential dot hybridization法を用いて、K-ras codon 12の点突然変異を調べた結果、Bis-GMAは0.01-0.1μg/mlで変異が検出されたが、Bis-MEPPは0.01-100μg/mlまで変異は検出されなかった。ストレスタンパク質であるGRP78のアンチセンスcDNAをRSa細胞に導入し、GRP78の発現を抑制した細胞を樹立した。この細胞の紫外線誘導変異頻度は、親株RSaのそれに比べ約10倍高く、BPA誘導変異頻度は親株に比べ約2倍高かったので、この細胞を高感度突然変異検出系に使用できる可能性が示唆された。
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