本年度は、以下のような進展があった。 1.昨年試作した舌圧センサシート(I-scanシステム、ニッタ社)を臨床応用するための基礎的検討を行った。キャリブレーションのための装置を製作し、5箇所の感圧点を同時に荷重してそれぞれの応答特性を把握してキャリブレーションを行うことが可能となった。本センサシートについては、現在特許出願を準備中である。 2.舌圧センサシートを貼付する口蓋床を歯科用圧迫成型器で試作し、舌圧を計測したところ、厚さ0.5mmと1.0mmにおいて計測値に差が認められず、違和感の少ない薄型口蓋床の使用が可能であることが確認された。 3.上顎全部床義歯装着者に対して、口蓋床および上顎義歯口蓋部にセンサシートを貼付して嚥下時の舌圧を測定する実験を行い、いずれも操作上問題がないことを確認した。 4.舌圧測定実験中に舌の接触状況により、前方部の接触点のデータが低くなる傾向が認められた。これは、センサシート内に封入された空気の移動によるものではないかと推測され、現在メーカーに依頼してシートの設計改良を検討中である。 5.嚥下音についてはマイクロフォンで記録し、舌圧波形と嚥下音波形を時間軸上に同時表示することに成功した。今後、顎運動成分とのデータ統合を検討し、所期の目的である評価システムの完成をはかりたい。 6.ヨーロッパ高齢者歯科学研究会において本研究の概要を報告し、来年度よりジュネーヴ大学歯学部高齢者歯科学講座と共同研究を行っていくことでほぼ合意が得られた。 7.聖隷三方ケ原病院リハビリテーション科との共同研究において、摂食・嚥下リハビリテーション中の患者に対する評価への応用の可能性が確認され、今後さらに臨床応用の検討を進めていくことで合意が得られた。
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