研究分担者 |
中村 茂 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (90227900)
寺野 元博 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (90264259)
山邉 芳久 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (90191379)
小池 麻里 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00234667)
金岡 利佳 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (50336179)
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研究概要 |
我々は口腔内に存在する数種類の単独の有機酸の中でチタンが腐食することを確認し、平成15年11月には腐食反応が顕著なシュウ酸に対する浸漬試験の結果を報告した(黒木他:2003).本年度はこれに加えて,より口腔内に近い環境を考慮して,ヒト全唾液に含まれる9種類の有機酸で調整した有機酸混合溶液中におけるチタンの腐食挙動を検討し,以下の結果を得た. モリタ社製純チタンA(JIS第2種)をメーカーの指示に従い鋳造し,800番の耐水研磨紙まで仕上げ研磨し試料とした. 浸漬液は,前回の科研で報告した健常者の安静時唾液における有機酸9種類の濃度を参考に,1)有機酸総濃度7.13mmol/lの溶液(7.13有機酸),2)有機酸の比率は同じで1%乳酸溶液のモル濃度に相当する128mmol/lに調整した溶液(128有機酸),および,3)1%乳酸溶液(コントロール;128乳酸)の3種類とした.浸漬試料には37℃,80回/minの浸盪を加えた. 浸漬3週間後,浸漬液へのチタン溶出量測定,重量測定,および色差測定を行った.さらに,浸漬前後のチタン表面性状の変化も観察した. 全浸漬後溶液に色の変化や沈殿物は視認しなかった.浸漬液中のチタン溶出量は,128有機酸中で最も大きかった.試料重量変化は,128有機酸,7.13有機酸および128乳酸の順に少なくなる傾向が見られた.すべての浸漬後試料では肉眼的に差は認められなかった.試料表面色の変化ΔE*abは,溶液間で有意差はなかった.また,SEM像では、すべての試料において明らかな変化は認められなかった. 以上の結果は,同じモル濃度では乳酸溶液よりも有機酸混合溶液が,約2倍の溶出量を示し,重量変化も認められたことから,唾液に含まれる有機酸によって口腔内のチタン製修復物が腐食変化をおこすことを示唆している.(平成16年5月発表予定)
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