研究概要 |
歯科鋳造用埋没材が微粉末で構成されていることは広く知られている。しかし、それらは術者が開封、開缶、秤量、初期手練和時に体内へ誤吸引する恐れがあり、呼吸系疾患を引きおこすことが懸念される。さらに、リン酸塩系埋没材では人体に有害なアンモニアガスの放出もあり作業環境としては厳しい状況であるといえる。そこで、粉末をペーストに置き換えたアンモニアフリーのペースト・ペースト型リン酸塩系埋没材を検討した。第一リン酸マグネシウム(米山化学)が水溶性であることを利用して、耐火材であるクリストバライト(龍森)と一緒に蒸留水にて粘性を出し、ペースト状に置き換えた(ペースト1)。また、もう一つの結合材である酸化マグネシウム(タテホ化学)は水に不溶性であるため、ワセリンと一緒に混合して油脂状のペーストを作製した(ペースト2)。これらを用いてペースト1:ペースト2がA:79.6-25.5,B:82-22.5,C:84.4-19.5,D:86.8-16.5(単位:g)となるように4種類のペースト型埋没材を試作した。Aは生型強さが8.65±1.55MPaであり、900℃で焼成後でも7.60±0.62MPaの強さを示し、酸化マグネシウムをベースとしたペースト2の割合が低くなると強さが低下する傾向であった。また、硬化時間はいずれも約8分で硬化することが認められ、その際の寸法変化はほとんど認められなかった。加熱膨張はクリストバライトの添加量に依存するため今回の測定ではDが最も大きく、900℃では1.8%であった。これらに結果より、ペースト型に調整した試作リン酸塩系埋没材は歯科臨床に充分に利用可能であると考えられた。
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