研究概要 |
生体親和性に優れるチタンおよびチタン合金は,精密鋳造に不適な材料である.そこで,金属床義歯作製に代えて粉末冶金法を導入した場合,融点以下の温度で焼結するため、鋳造が容易でない金属材料の応用が可能となる.しかし,焼結時の収縮をどのように軽減させ,寸法精度に優れた補綴物を得るかに関しては,数多くの問題が未解決である.本研究はその具体的臨床システムの開発を目的としたものである. まず,シート作製条件の検討として,球形Ti粉末に10wt%の添加剤を混合し,ドクターブレード法にて作製したTiシートが6〜9wt%,10〜15wt%の添加剤を混合したシートと比較し,操作性,粉末の緻密化の点で最も有用であると確認された. 次に,10wt%添加剤含有球形Tiシートを用い,焼結温度および焼結時間について検討を行った.焼結温度に関しては,900℃〜1050℃において硬さ,引張および曲げ強度の増加が顕著にみられ,1000〜1050℃1hの焼結サイクルが適しているものと考えられた. さらに,機械的強度の向上を目的とし,球形Ti粉末に軽度の粉砕工程を加えた粉末を用いたTiシートについて比較検討した.900℃〜1150℃間を50℃間隔の6種の温度で焼結を行い,球形Tiシートと比較したところ,引張および曲げ強度が有意に増加した.またSEM観察では,軽度の粉砕工程を加えた粉末を用いたTiシートが,粉末粒子間のネックの成長がスムーズに起こりやすいことが確認された. 本研究で作製した焼結Tiは鏡面研磨が困難であるため光沢に乏しい.そこで,焼結金属の表面性状の改善を目的とし,金属表面にレーザー照射を行った.レーザー照射を行うことにより,表面粗さは減少し,審美性が求められる部位での応用も可能と考えられた. 現在,このTiシートを臨床症例に準じた形態でのフレームを作製中である.より実際的な見地から検討し,臨床技法を確立したい.
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