研究概要 |
ヒト舌癌細胞株におけるhTERT(ヒトテロメラーゼ触媒サブユニット)プロモーター活性を利用しRas癌遺伝子の抑制変異体であるN116Yをヒト舌癌細胞で発現させることにより、in vitroにおける増殖が癌特異的に抑制されるかどうかを検討した。hTERTプロモーターとN116Yの遺伝子を接続し、非増殖性アデノウイルス(AdMaX, Microbix)に組み込んだベクター(Ad.hTERT-N116Y)とhTERTプロモーターのみを組み込んだコントロールベクター(Ad.hTERT)を作製した。その後、ヒト舌癌細胞株(HSC-3)およびヒト正常口唇線維芽細胞株(KD)に各ウイルスを感染させて、MTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bromide)assayにより細胞増殖抑制効果を経時的に測定した。hTERTプロモーター活性陽性のHSC3細胞では、Ad.hTERT-N116Yウイルスを感染させた場合、非感染細胞およびAd.hTERTウイルスを感染させた場合と比較して増殖が有意に抑制された。これに対し、KD細胞ではこのような増殖抑制効果は認められなかった。hTERTプロモーターとN116Yを搭載したアデノウイルスベクターは、癌細胞特異的に細胞増殖抑制作用を示し、hTERTプロモーター活性陽性の舌癌に対する遺伝子治療に用いられる可能性が示された。
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