研究概要 |
我々はこれまでに、IL-18の抗腫瘍効果メカニズムについて、マウスの系を用いて解析し、そのエフェクター細胞がNK細胞であること(W.Hashimoto et al. Int. J. Cancer 2003,103 : 508-513.)、またIL-18がNK細胞を活性化し腫瘍細胞をアポトーシスに陥らせる結果、樹状細胞を介して効率良く腫瘍特異的CTLを誘導すること(F.Tanaka, W.Hashimoto et al. Cancer Res. 2000,60:4838-4844)などを明らかにしてきた。また、ヒトでの、IL-18の抗腫瘍効果、特にその詳しいエフェクター細胞の解析を行った。ヒト末梢血をHuIL-18で14日間刺激・培養し、リンパ球の表面マーカーの変化を解析したところ、CD3-CD56+(NK)細胞が著明に増加すること、そしてその際に培養液中に多量のIFN-γの産生が認められることが分かった。そこで平成14年度は、IL-18により活性化されたリンパ球が腫瘍細胞に対してアポトーシスを誘導するかどうかを、Annexin-V, Phi-Phi-Lux, PI染色等により検討した。その結果、IL-2単独で培養した場合と比べてIL-18+IL-2で培養したとき、腫瘍細胞のアポトーシスが増強されることが明らかになった。さらに、IL-18で刺激培養したリンパ球のmRNAを抽出し、アポトーシス関連蛋白の発現をRT-PCR法により検索したところ、TRAIL, FasLの発現増強が顕著に認められた。以上のことより、ヒトの系においてもIL-18が抗腫瘍効果を有すること、またその抗腫瘍効果にはTRAIL, FasLなどの蛋白を介したアポトーシスが大きく関与していることが明らかになり、今後ヒト悪性腫瘍治療への臨床応用の可能性が強く示唆された。
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