研究概要 |
我々はこれまでに、IL-18の抗腫瘍効果メカニズムについて、マウスの系およびヒトの系を用いて解析し、マウスの系においてはエフェクター細胞がNK細胞であること、IL-18がNK細胞を活性化し腫瘍細胞をアポトーシスに陥らせる結果、樹状細胞を介して効率良く腫瘍特異的CTLを誘導することなどを明らかにした。また、ヒトでのIL-18の抗腫瘍効果を調べた結果、ヒト末梢血中にCD3-CD56+(NK)細胞が著明に増加すること、その培養液中に多量のIFN-γ産生が認められることが分かった。 本研究では、ヒトでのIL-18の抗腫瘍効果をより詳細に検討した。まずIL-18により活性化されたリンパ球が腫瘍細胞に対してアポトーシスを誘導するかどうかを検討した結果、IL-2単独で培養した場合と比べてIL-18+IL-2で培養した際、腫瘍細胞のアポトーシスが増強されることが明らかになった。さらに、IL-18で刺激培養したリンパ球のmRNAを抽出し、アポトーシス関連蛋白の発現をRT-PCR法により検索したところ、TRAIL, FasLの発現増強が顕著に認められ、ヒトの系におけるIL-18の抗腫瘍効果はTRAIL, FasLなどの蛋白を介したアポトーシスが大きく関与していることが明らかになった。次に、実際に口腔癌患者から末梢血細胞の採取を行い、IL-18に対する反応性の変化について検討した。術前化学療法の開始から手術までの過程において末梢血細胞の採取を行い、NK細胞やT細胞の変化を検索した。本研究では、当病院の倫理委員会に書類を提出し認可を得た後、実際に患者からサンプル採取に取りかかった。まだサンプル数が少ないため、本格的な解析には至っていない,臨床サンプルの採取を継続し、口腔癌患者の末梢血細胞におけるIL-18の抗腫瘍効果を検討することにより、IL-18を用いた悪性腫瘍に対する免疫療法の開発を進める。
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