研究課題
基盤研究(B)
臨床応用可能な骨・軟骨系生体組織再建法を確立するために、医学・工学両分野の連携を密にして以下の成果を得た。1.新規担体に関しては、PLGAとコラーゲンのハイブリッドメッシュを開発した。このメッシュは厚みを調整することができ、PLGAによる優れた強度と、コラーゲンによる優れた生体親和性を併せ持つ優れた素材となった。この担体にウシ軟骨細胞を播種し培養すると、容易に接着して旺盛に基質を産生し、脱分化の抑制効果も見られた。これらの結果からこの担体は極めて優れた特性を持つと結論した。2.培養法に関しては、培養皿を旋回しながら培養する方法を行い、骨髄間葉系細胞のスフェロイドを作成した。スフェロイド培養においては、細胞は通常の平面培養とは異なる3次元で培養され、より生理的な条件に近いと考えられる。この方法を用いることで、より生理的に近い状態での骨・軟骨系細胞の挙動と最適な分化・増殖刺激を評価する系ができた。またこのシステムを用いることで、骨・軟骨系細胞のスフェロイドを大量生産できるようになったため、これらを担体に接着させて人工骨・軟骨に利用する計画である。3.骨・軟骨分化刺激に関しては、iNOSや細胞内カルシウムの骨芽細胞分化に対する役割を明らかにした。これらの知見を応用することで、骨・軟骨系細胞の分化誘導を改善していくことが考えられ、実際にiNOSの発現をRNAiで低下させることで、サイトカインによる骨芽細胞分化抑制が減弱することが示された。4.血管網に関しては、bFGFが、従来から研究されているVEGFにも優る血管誘導能を持つことを示すとともに、VEGFとbFGFを併用すると更に優れた血管誘導効果があることを示した。以上の結果は、血管網構築を基盤とした細胞3次元培養による骨・軟骨系生体組織再建を実現するための技術基盤の大きな進歩をもたらしたものと考えている。
すべて その他
すべて 文献書誌 (12件)