仮骨延長法は手術侵襲が少なく確実な骨新生が期待できる点が長所であるが、骨延長後の骨形成が達成されるまでの2〜3ヶ月間は装置を装着しておく必要があり、治療期間が長期に及ぶ点が短所とされている。その欠点を解消する目的で、骨延長部位に微量電流を流したり、超音波をあてるなどの理学的方法が報告されているが、いずれも仮骨延長法の治療期間を短期で終わらせるための抜本的な改善策には至っていない。本研究ではこの仮骨延長法の短所を改善すべく、骨形成に関与する各種growth factorに着目し、骨延長部位に発現しているであろうと思われるこれらgrowth factorの同定ならびに骨延長部位への発現時期を分析・解明することで仮骨延長法の治療期間を短縮させることを目的としている。 本研究の今年度の研究計画は、ウサギ下顎骨の仮骨延長部に発現する各種growth factorを経時的に同定し、さらに同定されたgrowth factorを骨延長部に先行投与して骨形成の状態を経時的に観察すること。また本実験系をウサギよりも大型のイヌにおいて確立し、可能であればウサギと同様に仮骨延長部に発現するgrowth factorを経時的に同定するというものであった。しかし現在までのところイヌを使用した実験系の確立には至っておらず、専ら再現性のよいウサギの実験系での研究が進行中である。ウサギの実験系でも、growth factorの骨延長部への先行投与実験には至っていないが、延長部に数種のgrowth factorのmRNAがが発現しており、現在これらの同定を急いでいる。なお骨形成と直接関連はしないが、骨延長部周囲の軟組織、特に筋肉に、仮骨延長法の場合と一期的骨延長の場合とで組織学的な差が確認されており、現在この差と顎骨の再建法(一期的延長再建法と仮骨延長法)との関連についても検索中である。
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