本研究では、まず、細胞周期制御因子であるp27^<KIP1>の発現について、その発現低下に蛋白分解を介して重要な役割を示すSkp2とJab1の発現との関係ならびに臨床病理学的因子との関連について検討した。口腔癌75例を対象とし、その発現を免疫組織学的ならびにウエスタンブロッティング法を用いて検討した結果、Skp2ならびにJab1の発現との発現は逆相関しており、Skp2ならびにJab1の発現例ではp27^<KIP1>の発現を認めず、逆にSkp2、Jab1の発現を認めないものでp27^<KIP1>の発現を認める傾向にあった。臨床病理学的因子との関係では、p27^<KIP1>の発現低下例、Skp2ならびにJab1の過剰発現例で、頸部リンパ節転移が有意に多く認められ、有意に予後不良であった。Skp2ならびにJab1の発現はp27^<KIP1>の発現低下と関連し、これらの制御因子の異常が口腔癌の進展に関与していると考えられた。この結果より、口腔癌における抑制遺伝子治療のtargetとしてp27^<KIP1>が考えられた。 一方、遺伝子導入法として選択したTAT-peptideによる新しい遺伝子産物導入法の導入・発現効率の検討では、TAT-11アミノ酸(YGRKKRRQRRR)をキャリアーとしたTAT-GFP(Green fluorescent protein)を精製した。このTAT-GFPを各種口腔癌細胞に導入し、その導入効率について検討した結果、細胞間で差は認めるものの、すべての細胞において60%以上の細胞でTAT-GFPの導入が確認された。このことから、口腔癌においてTAT-peptideによる新しい遺伝子産物導入法の有用性が示唆された。
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