1)スクリーニング検査法の開発:嚥下造影検査によって嚥下障害があると診断された患者の臨床症状や検査所見を解析した。その結果、発熱や鼻腔からの逆流は、嚥下障害のスクリーニング項目としての感受性は低いものの、食物の口腔内残留や食事中のむせが見られた症例については、90%以上の症例で誤嚥が確認され、これらの項目はスクリーニング検査としての感受性が高いと考えられた。 2)簡易型摂食・嚥下機能検査法と訓練法:摂食・嚥下運動に関連する器官(口唇から咽・喉頭まで)の運動機能を簡便に検査する方法を体系化した。本システムでは特殊な装置を必要としないため在宅や老人ホームでの評価も可能であり、同時に訓練法の立案にも有用な評価システムである。すでに口腔癌患者、脳血管障害患者に適用し、結果を集積中である。 3)近赤外線を用いた誤嚥診断装置の開発 発光ダイオード(LED)と受光ダイオード(PD)を頸部に装着し、喉頭や気管内にインドシアニングリーン(ICG)を流すと、近赤外線が吸光されることを動物実験モデルによって明らかにした。ICGの濃度は、0.5%の低濃度でも可能であったが、検査食としては味が悪いため、食品用色素剤などについても検討中である。 また健常者の嚥下運動に関する検討では、嚥下時の喉頭挙上によってLEDの吸収が起こるため、動物実験に比較すると検出力が著しく低下することがわかった。そこで、実験内容を十分に説明して承諾の得られた健常者について、嚥下動作時や咳反射時の喉頭挙上運動、舌骨や舌根部の動きなどによる近赤外線の吸光特性を計測し、嚥下動作が近赤外線の減弱に与える影響を検討している。具体的には、近赤外線の波長を変える、2種類のLEDを使用して喉頭の動きによる吸光特性の変化を除外する、LEDとPDの装着位置を変えるなどの方法を検討中である。
|