誤嚥の機序を解明するためには、正常な嚥下運動を詳細に解明しておく必要がある。しかし嚥下造影検査や内視鏡検査では、複雑で速い嚥下運動を3次元空間で観察することはできない。そこで、4次元MRI撮像法を用いて嚥下運動の可視化に関する研究を行った。 被験者は、本研究に対して同意の得られた健常成人1名(25歳、男性、個性正常咬合)である。次元MRIの撮像法はすでに報告したように同期サンプリング法である。撮像断面は9(断面)スライス、フレーム間隔は66msec(15フレーム/秒)、1スライスあたりの画像数は35フレーム(2310msec分)とした。スライス厚さは4mm(ギャップ1mm)に設定したため、撮像の範囲は正中矢状断を中心に左右幅44mm(両端のうち片方のギャップ幅1mmを除外)の範囲となった。また各スライスに付き35枚の2次元連続画像(9スライスでは計315枚の画像)が得られた。この315枚分の撮像データを外部コンピュータ上で3次元可視化用のソフトウエア(AVS/Express)形式に変換した。ボクセルサイズは1mm^3に変更(線形補完法)し、レイトレーシング法にて全フレームを可視化するともに3次元構築画像とした。さらに得られた3次元画像を時間軸上で連続再生することで4次元画像とした。 その結果、従来の内視鏡検査や嚥下造影検査に比べても、嚥下時の舌や軟口蓋、咽頭、喉頭の動きを詳細に画像化することができた。また嚥下時の鼻咽腔閉鎖は、まず咽頭側壁と後壁の収縮に始まり、次いで軟口蓋の挙上が起こることが明らかになった。 今後は、舌や咽頭、喉頭の動きの解明を進めて、誤嚥の機序を解明し、近赤外線法による診断法に展開していく予定である。
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