研究概要 |
歯周病原性菌Porphyromonas gingivalisのリジン特異的システインプロテアーゼ(KGP)は,本菌の病原性発揮に重要な役割を果たしていると考えられている.我々はこれまでに,KGPを標的としたDNAワクチンpSec Tag2A/kgpを作製し,マウスに筋肉内接種することにより,血清中に特異抗体が誘導され,P.g.感染に対する防御効果が認められることを確認している.本研究では,筋肉内接種,および宿主細胞内寄生細菌を用いた経口接種のそれぞれの方法で免疫したマウスにおいて,体液性,細胞性,および粘膜免疫がどのように誘導されているかを比較し,より効率的な免疫誘導法を確立することを目的としている.現在までに,経口接種法に使用する新たなkgpDNAワクチンであるpCMV/kgpの構築と,無毒化宿主細胞内寄生細菌Salmonella typhimurium SL7207株へのpCMV/kgpの遺伝子導入を行い,菌体内にDNAワクチンを保持した宿主細胞内寄生細菌を作製した.5週齢のマウスに,pCMV/kgpを用いた筋肉内投与法またはpCMV/kgpを保持した宿主細胞内寄生細菌の経口接種法により週1回連続4週の免疫を行い,初回免疫時より毎週1回採血し,血清中の抗KGP特異抗体価を調べたところ,経口投与したマウスにおいて,抗KGP特異抗体価の上昇が免疫開始後4週目より観察され,その抗体価は5週目でプラトーに達した.一方,pCMV/kgp筋注群においても抗体価の上昇が認められたが,経口投与群ほど顕著な上昇は認められなかった。また,Western blotting法により,経口投与群抗血清のリコンビナントKGPへの特異的な反応性が確認された.今後さらに,唾液中の抗KGP IgA抗体価や,細胞性免疫の誘導能について詳細な検討を加え,それぞれの投与法の有効性を検討する予定である.
|