研究概要 |
(1)顎関節症を有する患者の咀嚼運動軌跡について、最小ジャークモデルを適用して解析的なシミュレーションを行ったところ、モデルの予測精度は、正常咬合者の行う咀嚼運動に対して行ったシミュレーションが示した予測精度よりも有意に低いことが分かった。従って、顎関節症を有する患者の咀嚼運動は、正常咬合者が行う咀嚼運動と比べて円滑ではないことが示唆された。またこれらの相違はは咀嚼運動の開口相にてより明らかであることが分かった。また最小ジャークモデルによる予測精度は、顎関節症状の客観的評価とほぼ一致していた。すなわち最小ジャークモデルによる予測誤差は、顎関節の症状が明らかであるほど大きい値を示した。以上の結果から最小ジャークモデルを適用した解析的なシミュレーションの予測誤差は、顎関節症状が咀嚼運動の円滑性について与える影響について客観的に評価できる指標を提供することが明らかとなった(Yashiro and Takada,2005)。 (2)骨格性下顎前突症の1症例や前歯部の咬合干渉を有する前歯部叢生の1症例について、治療の前後で咀嚼運動のジャークコストの値や、最小ジャークモデルを適用して解析的なシミュレーションを行った時のモデルの予測精度を比較した結果、予測誤差やジャークコストは、治療前には正常咬合者よりも有意に高いを示していたが、治療後には正常咬合者についての値とほぼ一致するまでに低下した。以上の結果からジャークコストや最小ジャークモデルによる運動軌跡の予測誤差は、矯正治療善後における咀嚼運動効率の向上を客観的に評価できる指数として用いることが出来ることが明らかとなった(Yashiro and Takada,2004;Yashiro et al.,2004)。 (3)下顎運動のジャークコストは、発音時の運動軌跡の円滑性の変化を高い感度で客観的に評価できることが明らかとなった(Yashiro et al.,2004)。
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