研究概要 |
歯科医療の臨床では,小児から高齢者に至るまであらゆる年齢層において,咬合誘導装置,歯科矯正装置,義歯等の様々な装置が口腔内に装着される.これらの装置は,口腔内細菌を付着させやすく,それゆえ齲蝕,歯肉炎,口腔粘膜疾患を惹起させ易い. 本研究は,それらの口腔内装置表面にプラズマベースのイオン注入技術(Plasma Based Ion Implantion,以下PBII法)によりフッ素イオンを注入し,口腔内細菌を付着させにくい,また付着した細菌を離脱させやすい表面に改質することを目的にしている. これまでに,純チタン(以下Ti),ステンレススチール316L(以下SUS)およびPMMAレジン(以下PMMA)の各試料表面にAr+F_2あるいはCF_4よりフッ素イオン注入した試料を調整した.フッ素イオンの注入条件は,TiおよびSUSでは5keV, PMMAでは3keV,注入時間は共に60分である. 平成16年度には,抗菌性試験を行った.すなわち,2.0x10^7cfu/mlに調整した齲蝕原生レンサ球菌S.mutans菌液2.0mlに,CF_4ガスを注入した試料,10mm×10mm×1mmのSUSあるいはPMMA,を浸潰した.37℃,48時間培養後,通法に従い生菌数カウントを行った.統計学的分析にはt検定を用いた.結果は表に示すとおり,Fイオン注入群の生菌数が対照群に比べ有意に低く,抗菌効果を認めた. 表 S.mutansに対する抗菌効果 生菌数(cfu/ml) Sample SUS Control SUS+CF_4 Mean±SD 4.36×10^7±0.46×10^7 1.98×10^7±0.26×10^<7*>*:p<0.001
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