研究課題/領域番号 |
14370697
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西野 瑞穂 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90029976)
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研究分担者 |
有田 憲司 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教授 (20168016)
清水 謙 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助手 (60274247)
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キーワード | 歯学 / プラズマベースイオン注入 / 表面改質 / フッ素イオン / 銀イオン / 純チタン / 二次イオン質量分析 / SEM観察 |
研究概要 |
歯科医療の臨床において、口腔内に装着される様々な装置は、口腔内細菌を付着させやすく、う蝕、歯肉炎、口腔粘膜疾患等を惹起させやすい。本研究は、純チタン材料(Ti)にフッ素(F)イオンと、抗菌性を有するとされる銀(Ag)イオンをプラズマベースのイオン注入技術(PBII法)により注入し、口腔内細菌を付着させにくい表面に改質することを目的としており、FおよびAgを同時注入したTi試料の表面分析をおこなった。FおよびAgの試料内部深さ方向のイオン分布を二次イオン質量分析装置(SIMS)にて測定、試料表面の元素の存在比および結合状態をX線光電子分光分析装置(XPS)にて測定した。試料表面の接触角を蒸留水を用いた液滴法で測定した。表面状態を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。 結果は次のとおりであった。 1.SIMS分析より、Fは約10nm付近をピークに存在しており、Agは極表層(3nm未満の部位)に存在していた。 2.XPS分析より、F+Ag注入試料のFとAgの存在比は、Ti2pを1とした場合、F:Ag=0.6:0.3であった。また、Ti2pの化学状態については、表面はTiO_2の状態で存在し、Fが含まれる深部においては、TiとFの化合物の状態と思われるケミカルシフトが見られた。 3.接触角はイオン注入試料において有意に大きい値を示した。F+Ag注入群とF注入群との間には、明らかな有意差は認められなかった。 4.SEM観察において、F注入群およびF+Ag注入群の表面形状が対照郡と異なることを認めた。 本研究において、PBII法によりFイオンおよびAgイオンを注入した試料において、Fイオンは表面および内部に、Agイオンは表面に存在していた。FおよびAgの抗菌作用は広く知られており、これらの元素が材料表面に存在するということは、その薬理作用が期待できると考えられる。また、イオン注入により材料表面の接触角が大きくなっており、細菌の付着抑制が期待できる。今後、細菌の付着性と離脱性等について検索する必要がある。
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