研究概要 |
生体変位測定法を用いて、種々の荷重条件下で上顎前歯の初期変位動態を解析した結果より、荷重レベルと前歯移動中の回転中心を明らかにすることができた。アングルClass II div.1不正咬合の改善には、controlled tipping(制御された傾斜移動)を達成するためのメカニクスとして、アーチワイヤーに組み込まれた4mmのパワーアームから前歯を牽引する方法がを推奨され、アングルClass II div.2不正咬合の改善には、歯根移動を達成するためのメカニクスとして、7mmのパワーアームをアーチワイヤーに組み込み、前歯を牽引する方法がを推奨された。前歯舌側移動の固定源として、矯正用インプラントを用いることにより、短期間で、効率的な歯牙移動を実現することに成功した。生体での初期変位を測定する方法で得られた歯牙移動のための最適条件を実際に治療に応用し、治療前後の歯列模型を採得した。非接触・高速3次元形状計測装置(VMS-150R-D、ユニスン社)を用いて,歯列模型の三次元データを取り込み,移動前後の歯列模型形状データを三次元的に重ね合わせることにより,矯正治療中の歯の移動動態の解析を行った。その結果、矯正学的な歯の移動に伴い、前歯の傾斜移動の程度に応じて、力系がわずかに変化し、初期変位より予想された歯の移動動態にも影響することが示唆された。初期変位移動動態を補正することにより、矯正学的な歯の移動をより精度よく予測することが可能になると考えられた。
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