研究概要 |
本研究は従来の歯科的個人識別法に加え,変性度合いの高い法医学上の生物学的資料から広範な情報を得て,個人識別精度をあげて行こうと計画したものである.初年度は211人の日本人のミトコンドリアDNA多型について、coding領域の系統と関連する多型検査を行い,最も詳細な日本人のmtDNAの系統を確立し,新しい系統を含めて33のハプログループに分類した.その後coding領域の多型を検索しながら、全mtDNAゲノムの情報に近い分類から106の系統と197型に分類した.続いて80人をデータベースに追加すると共に30人のマレー人について検査を行い、9種の新しい系統を見い出した。Y染色体多型については263人の資料について16種類のSTR多型の検査と、biallelic markerによる日本人の系統分化を明らかにし、同時にSTR多型からbiallelic markerによる系統が推測可能であることを示し、さらに47zの多型からbiallelic markerの系統を容易に推測する方法を見い出した。mtDNAとY染色体多型は、他のアジア人との比較から、個人識別対象者の地理的な起源の推測に有用であることをとを示した。変性度合いの異なるDNAを収集し、DNA変性がSTRとSNPs検査の際のPCRに及ぼす影響とcontaminationの影響について系統的に検査を行い、高度変性DNAの検査ではSNPsがSTRより信頼度が高いことを示した。また唾液タンパク関連遺伝子familyの多型検査と共に歯科臨床に係わる基礎的研究を行った。 以上のごとく、当該年度において、私達は高度変性DNA検査においてはSNPsの多型検査が信頼度が高いことを示すとともに、mtDNA、Y染色体多型を中心にSNPsの知見を増加した。本研究成果は法歯学実際面におけるDNA多型検査に、極めて有用な知識を提供したものと考えている。
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