研究概要 |
小児歯科臨床において,歯科医師は保護者とのインタビュー以外に,小児患者の健康状態や協力状態について患者の顔つきや態度を情報として対応している。その中で,術者と小児患者が対面した場合,相互に相手の顔つきをうかがうことが多くなる。今回,小児患者が男性歯科医師の正立顔写真のどのようなところから情報を取り込んでいるのか,その取り込み方に年齢差が存在するのかを調べるために,非接触型眼球運動測定装置FreeView(竹井機器工業社製)を用いて,男性歯科医師の正立顔写真をテスト画像として実験を行った。対象は保護者と本人の承諾を得た2歳11か月から12歳11か月の小児計90人である。そして被験児をA群(7歳未満),B群(7歳以上10歳未満),C群(10歳以上13未満)の3群とし,それぞれ眼球運動を測定,分析した結果,次の結論を得た。 1.背景へのサッケードと停留点(停留回数,停留時間,背景を含む停留部位パターンの人数)は,A群からB群,B群からC群に向かって減少した。 2.諸部分(目,鼻,口)と外観(髪,額,頬,耳,顎)へのサッケードは,A群,B群,そしてC群に共通して諸部分での重なりが顕著であり,外観全体へは走査していなかった。 3.諸部分への停留点(停留回数,停留時間,諸部分を含む停留部位パターンの人数)は,A群からB群,B群からC群に向かって増加した。 4.外観への停留点はその分布状況から,A群,B群,そしてC群に共通して外観全体へ散在するのではなく,諸部分へ近接するものが多かった。
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