研究概要 |
1.オルト位にベンジルオキシ基を持つフェニルジアゾ酢酸エステルの分子内C-H挿入反応において、トルエン中Rh_2(S-PTTL)_4を用いると、-78℃下反応が円滑に進行し、2,3-cis-置換ジヒドロベンゾフランが完璧なジアステレオ選択性並びに94%の不斉収率で得られることが分かった。また、α-ジアゾエステルを基質とする分子内C-H挿入反応では、cis-2-置換シクロペンタンカルボン酸エステルが完璧なジアステレオ選択性並びに97%の不斉収率で得られることを見出した。 2.芳香環不斉C-H挿入反応において、Rh_2(S-PTTL)_4のフタルイミド基ベンゼン環の四つの水素原子をフッ素原子で置換したRh_2(S-TFPTTL)_4がRh_2(S-PTTL)_4に比べ格段に高い反応性、エナンチオ選択性および触媒回転能(TON:98,000)を示すことが判明した。また、本錯体は(2-ニトロフェニルスルフオニルイミノ)フェニルヨーディナンをナイトレン前駆体とする不斉触媒反応において、シリルエノールエーテルを基質とした場合、最高不斉収率99%でα-アミノケトン誘導体が得られることが分かった。 3.カルボニルイリド形成を経る不斉1,3-双極付加環化反応において、電子求引性のアルデヒドあるいはアルキンを求双極子剤に用いると、最高97%の不斉収率が得られることが判明した。同時にカルボニルイリド前駆体となるジアゾ基質の種類によっても、その成否が大きく左右されることが分かった。また分子軌道計算(HOMO-LUMOエネルギー差と軌道係数)による予測が有効な反応系があることも判明した。
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