研究概要 |
天然物には,人知の及ばぬ化学構造とそれに伴った新規な生物活性をもつものがあり,創薬研究に対する天然物の重要性は今後も尚変わることなく,一定の割合での貢献を持続していくことが期待される.本研究では,未利用生物資源として,海洋生物,変形菌ならびに熱帯性薬用植物等を取り上げ,天然物ライブラリーの構築と有用生物活性分子の探索を行う. (1)海洋生物からの天然物探索:千葉県周辺を中心に沿岸海域において微細藻ならびにウミウシ(後鰓類)の調査・採取を行った.数種の培養用微細藻株保存株を得るとともに,数十種の後鰓類抽出物エキスを調製し,数種の生物活性スクリーニングを行った.一種の微細藻(珪藻Odontella aurita)について大量培養ならびに成分研究を行い,新規ステロールパーオキシドを単離した. (2)国内各地において変形菌の調査・採取を行い,培養用菌株の分離および変形体の大量培養を行った.Didymium bahienseの培養変形体から抗菌活性をもつ新規グリセロリピドを単離した.一方,野外採取変形体(子実体)の成分研究も行い,Lindbladia tubulinaより数種の新しいナフトキノン型赤色色素を単離した. (3)タイ産熱帯植物抽出物に関して,主に細胞外マトリックス分解酵素阻害作用,細胞周期阻害作用,アルテミアサリナ(甲殻類)毒性等に関するスクリーニングを行った.アルテミアサリナ毒性成分としてセンダン科Lansium domesticumよりオノセラノイド型新規トリテルペン,ショウガ科Curcuma parvifloraよりセスキテルペン二量体型新規骨格成分を単離した.一方,ニガキ科Brucea amarissimaからは新規セコイリドイド成分を単離した.
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