研究概要 |
我々は4-ピロリジノピリジン(PPY)を基本骨格とする不斉求核触媒を既に開発し、本触媒がラセミ体アミノアルコールのアシル化による速度論的分割で高いエナンチオ選択性を示すことを既に見出している。本年度は4-ヒドロキシ-L-プロリンを出発物質とし、ピロリジン環の2位と4位に2つの官能基側鎖を持つPPY型不斉求核触媒、及びL-ピログルタミン酸を出発物質としピロリジン環の2位と5位に2つの同じ官能基側鎖を持つC_<2->対称PPY型不斉求核触媒の触媒ライブラリー構築を行なった。これらを用いてメソ-1,2-ジオール及びメソ1,3-ジオールの不斉非対称化を行なった。メソ-1,3-ジオールの不斉非対称化では2位の官能基側鎖が不斉誘導に主要な役割を果たすこと、また4位の官能基側鎖によりジオールのアシル化の化学種選択性とエナンチオ選択性の両方を制御できることがわかった。2位にL-トリプトフアン由来の官能基側鎖を持つ不斉求核触媒から生成するアシルピリジニウム中間体では、インドール環がアシルピリジニウムのピリジン環とface-to-face型のπ-π相互作用を起こし、これが不斉アシル化に重要な役割を果たすことがわかった。一方、メソ-1,2-ジオールの不斉非対称化ではC_<2->対称PPY型不斉求核触媒が極めて有効に働き、約60%収率で光学的に純粋なモノアシル化体を与えることがわかった。これらの反応では2位、4位に2つの官能基側鎖を持つPPY型不斉求核触媒とは対照的に2位、5位の官能基側鎖の構造が選択性にあまり影響を与えないこともわかった。
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