本年度は以下に示す(1)-(3)のような結果を得た。 (1)ラソノリドAのC1-C16セグメントの両エナンチオマーの高エナンチオ選択的合成法を確立した。この合成ルートは効率的であり、且つ両エナンチオマーを供給できる柔軟性に富むものである。最近、韓国のLee教授がラソノリドAは非天然型エナンチオマーの方が強い細胞毒性活性を示すことを明らかにしたことから、我々の開発した合成法は今後の創薬研究において重要な位置を占めることが期待される。 (2)全合成達成の鍵を握るC18-C25セグメントの合成に関し、種々検討を加えた結果、ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン型キラル合成素子を活用する置換ヒドロピラン環の高立体選択的合成ルートを切り開くことができた。このルートで用いたキラル合成素子は、大量合成が容易であると同時に分子の特性を活用することによりピラン環上の不斉中心を高立体選択的に構築できる利点を持っている。現在までのところ、C17-C23に相当するセグメントの合成に成功しており、今後C23位への炭素鎖のジアステレオ選択的導入を検討する計画であり、これが達成できれば全合成は完結できると確信する。 (3)この合成研究途上に得られた中間体、特に置換ヒドロピラン誘導体7種に対し、細胞毒性及びアポトーシス誘導活性評価を行った。その結果、比較的シンプルな構造を有する中間体の一つにアポトーシス誘導活性が認められた。
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