海洋産ポリケタイド、ラソノリドAは細胞接着誘導阻害活性や細胞毒性活性を示す。我々はこの微量天然物の効率的な化学合成ルートの開発と新規医薬品開発のためのリード化合物の創製を目的に検討を行い以下のような成果を得た。 (1)ラソノリドAのC_1-C_<17>セグメントの高エナンチオ選択的且つ効率的合成法を確立した。この合成ルートは両エナンチオマーを供給できる柔軟性に富むものである。 (2)ラソノリドAを合成する上で最も困難なC_<18>-C_<25>セグメントの構築を、ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン型キラル合成素子の分子特性を活用することで達成した。この合成ルートは、置換ヒドロピラン環の高立体選択的合成法として高い一般性を有しており、有機合成化学的に価値あるものである。 (3)側鎖となるC_<26>-C_<35>セグメントの合成にも成功し、ラソノリドAに必要な全てのパーツの構築を完成した。更にC_1-C_<17>セグメントとC_<26>-C_<35>セグメントとのカップリングを行なった後、閉環メタセシスによってC_<17>-C_<18> E-olefin構築を行いマクロリド環形成を行なった。その結果、天然物とは逆のZ-olefinが選択的に得られることが明らかになった。ラソノリドAは非天然型エナンチオマーの方が強い細胞毒性活性を示すことが明らかにされていることから、今回の合成研究の成果は今後の細胞接着誘導阻害活薬物の開発に貢献できると期待される。 (4)上記合成研究途上に得た数種の中間体の生物活性評価を行なった。白血病由来細胞THP-1を用いて細胞毒性試験を行った。その結果、比較的シンプルな単環性6員環ラクトンに細胞毒性(IC_<50>=31μM)ならびにアポトーシス誘導活性があることが明らかとなった。
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