銀染色レベルに対応できる糖タンパク質糖鎖の網羅的解析法の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14370732
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 掛樋 一晃 近畿大学, 薬学部, 教授 (30101405)
• 研究分担者: 木下 充弘 近畿大学, 薬学部, 助手 (40330279) ; 小田 泰雄 近畿大学, 薬学部, 助教授 (70111036)
• キーワード: 糖タンパク質 / キャピラリー電気泳動 / レクチン / N-結合型糖鎖 / 癌

研究概要

銀染色レベルに対応できる糖タンパク質糖鎖の高感度分析法の達成のために、(1)糖タンパク質糖鎖の網羅的解析法および(2)細胞表面糖鎖の網羅的解析法について検討した。(1)については銀染色レベルで検出される微量の糖タンパク質糖鎖の構造解析を目指し、レーザー励起蛍光検出を利用するキャピラリー電気泳動と数種のレクチン含有電気泳動用緩衝液を組合せ、網羅的かつ高感度な分析法を開発し、試料として数百ng〜数μgの糖タンパク質より得られる糖鎖混合物中の糖鎖を分離精製することなく一斉解析することに成功した。(2)については細胞表面に存在する糖タンパク質糖鎖についてN-グリコシダーゼ消化により得られる糖鎖混合物を蛍光標識し、(1)の方法を利用して網羅的に解析する方法について開発した。
本法を利用して、ヒト血清糖タンパク質であるα1酸性糖タンパク質(AGP)、ウシ胎児血清由来フェツイン、ヒト及びウシ血清IgGならびにブタチログロブリン中のN-結合型糖鎖の糖鎖構造解析を行った結果、各糖タンパク質あたり3時間以内に全ての糖鎖成分を分類・推定することができた。また種々の癌患者血清由来AGP中の糖鎖分析へ応用し、癌の種類や臨床ステージにおいて含まれる糖鎖成分が著しく異なることを見出し、特に複合型3本鎖および4本鎖糖鎖にフコースが2残基以上結合した過フコシル化糖鎖を多く含むことを見出した。さらに種々の癌細胞表面に存在する糖タンパク質についてN-グリコシダーゼ消化により得られる糖鎖混合物を蛍光標識後、同様に解析を行った結果、全ての細胞についてマンノース5〜9残基からなるハイマンノース型の糖鎖を共通の糖鎖成分として含むことがわかった。
現在までに達成された糖タンパク質糖鎖の分析法は銀染色レベルに十分対応可能な感度であるが、炎症や癌などの病態変化に基づき変化する微量の糖鎖成分を追跡する方法としてなお未完成であり、質量分析法との組合せを視野に入れた分析法についても検討を行う必要がある。

研究成果

• [文献書誌] Nakano M, Kakehi K, Tsai MH, Lee YC: "Detailed structural features of glycan chains derived from alpha1-acid glycoproteins of several different animals--The presence of hypersialylated, O-acetylated sialic acids but not disialy residues"Glycobiology. (in press). (2004)
• [文献書誌] Nakano M, Kakehi K, Lee YC.: "Sample clean-up method for analysis of complex-type N-glycans released from glycopeptides"J Chromatogr A. 1005. 13-21 (2003)
• [文献書誌] Kakehi K, Kinoshita M, Oda Y, Abdul-Rahman B.: "Lectin from bulbs of Crocus sativus recognizing N-linked core glycan : isolation and binding studies using fluorescence polarization."Methods Enzymol. 362. 512-522 (2003)
• [文献書誌] Kakehi K, Kinoshita M, Yasuda S.: "Hyaluronic acid : separation and biological implications"J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 797. 347-355 (2003)
• [文献書誌] Akai R, Kinoshita M, Kakehi K, Lee YC.: "A method for detecting O-glycanase in biological samples using a combination of MALDI-TOF mass spectrometry and time-resolved fluorimetry."Analyst.. 128. 440-446 (2003)
• [文献書誌] Oda Y, Senaha T, Matsuno Y, Nakajima K, Naka R, Kinoshita M, Honda E, Furuta I, Kakehi K.: "A new fungal lectin recognizing alpha(1-6)-linked fucose in the N-glycan."J Biol Chem.. 278. 32439-32447 (2003)