研究課題
「銀染色レベルに対応できる糖タンパク質糖鎖の網羅的解析法の開発」の目的でピコモル〜フェムトモルレベルの糖タンパク質から切り離された糖鎖の解析法について、生体成分中からの複合糖質の分離精製法および糖タンパク質糖鎖の高速糖鎖構造解析について基盤的な研究を行った。以下に開発した技術とその概要を列挙する。(1)生体成分中の複合糖質の選択的捕捉:複合糖質を認識する分子を結合させた温度応答性ポリマーを用いて、血液や組織抽出液などから標的複合糖質を簡便かつ迅速に捕捉する技術を開発した。本技術を利用して、ポリリジンを結合した温度応答性ポリマーによるガン細胞由来プロテオグリカンの捕捉に成功した。(2)糖鎖-タンパク質間相互作用解析を利用する高速糖鎖解析法:細胞表面や糖タンパク質などから切り離された糖鎖の混合物は通常極めて複雑な混合物であり、混合物中の個々の糖鎖の構造を解析することは現在の技術をもってしても困難である。我々は糖鎖と糖鎖結合性タンパク質の特異性の高い相互作用を利用して、溶液中分離しながら糖鎖の構造を解析するという一石二鳥の方法を開発した。この方法は糖鎖アレーの基礎的データを得る方法としても非常に有用である。(3)糖タンパク質からの超高速糖鎖切り離し:糖タンパク質から糖鎖を切り離す方法として、化学的な方法や酵素を用いる方法などの多くの方法が開発されているが、我々は従来の方法の革新的な改良に取り組み、糖鎖の切り離しから解析までをほぼ1日で完了する方法の開発に目処をつけた。(4)複合糖質由来糖鎖の超高速分析:最近、キャピラリー電気泳動法のミクロ化ならびに高速化を目指したチップ電気泳動法の技術が進展し、高い実用性が期待できる装置も市販されるようになった。従来、生体中のグリコサミノグリカン類をセルロースアセテート膜電気泳動法により2〜3時間をかけて分析する方法が臨床化学の分野で適用されていたが、チップ電気泳動法とインターカレーター試薬を使用するin-situ蛍光標識法を利用して、秒単位の分析を可能とした。本プロジェクトにより開発した技術は各技術それぞれでも有効であるが、各技術をシステムとして統合すれば、従来少なくとも「週」〜「月」単位の作業を必要とした複合糖質中の糖鎖構造解析を「3時間」〜「4時間」程度にまで短縮可能であり、糖鎖解析技術に習熟していない技術者でも対応できるレベルにまで自動化するための基盤技術の開発に成功した。
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