研究概要 |
1・脂質ナノエマルションによるガドリニウムの腫瘍内蓄積を果たすべく静脈内直接投与法を確立し,その際の体内動態を調べた.Green's melanomaを保持したハムスターにおいて,1.5Gd mg/ml投与で腹腔内投与と比較すると,静脈内投与では,血中濃度は12時間までは高く,腫瘍内濃度は常時高い値を示し,6時間まではより速やかに上昇して6時間以後は一定値示した.12時間での濃度は27μg Gd/g wet tissueに達した.肝,脾臓,腎,肺では蓄積は早くより高い値を示した.また,皮膚,筋への蓄積は10μg Gd/g wet tissue以下であった。1.5及び3.0Gd mg/ml含量処方のエマルションの2回投与を行ったところ,総投与量に比例した腫瘍内蓄積が見られ,最高101μg Gd/g wet tissueに達した.これらの結果は,静脈内投与により,腹腔内投与と同等以上のガドリニウムの腫瘍内蓄積が得られることを示した. 2.脂質ナノエマルション処方から大豆油を除いたミセルナノ粒子処方を確立した.同等のエマルジョン処方と体内動態を比較すると,血中濃度は全体的に低く,腫瘍内蓄積はより速やかで,最高濃度は同等であるが消失傾向が見られた.肝や脾臓では著しい蓄積が見られたが,いずれも最高値を示した後消失傾向が見られ,1-2日後にはエマルション処方の場合と同等のレベルに達することが予想された.これらの結果は,ミセル処方でもエマルションと同等の腫瘍蓄積効果が得られることを示した. 3.ナノ粒子の細胞取り込みを見るべく,L929 fibroblast, B16F10 melanoma, Scc-VII squamous cellsの培養系を確立した. 4.キトサンナノ粒子の粒子径を、300nm以下にすることは従来困難であったが,低濃度系で調製することにより200nm以下にすることに成功した.これは,体循環へのキトサンナノ粒子投与を可能ならしめる成果であった.
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