研究概要 |
ラミニン由来の活性ペプチドの同定と、それらが器官発生、神経再生、創傷治癒などの高次生命現象に及ぼす役割を解明し、細胞特異的に働く活性ペプチドを医薬分野などに応用するための基盤づくりを目的に研究を行った。 ラミニンα3鎖、α4鎖、α5鎖のGドメインにおける生理学的な意味を解明するため、数種類の組換えタンパク質を動物細胞を用いて発現し、それらの生物活性の解析を行った。さらにGドメインのアミノ酸配列をすべて網羅した合成ペプチドを約千種類作成し、活性部位の同定を行った。また、組換えタンパクと合成ペプチドを用いてこれら3種類のGドメインのヘパリン結合部位の同定や、α3鎖Gドメインへの細胞接着はシンデカンに依存していることの証明を行った。本研究結果は、従来のECMの受容体といえばインテグリン一辺倒であった時代からの脱却を促すものである。同時にこの接着活性部分はマトリックスメタロプロテアーゼによって切断される部分で、細胞移動の場でのみ存在し、細胞遊走に重要な働きをしていると考えられる。また、2種類のペプチドをキトサン膜上に固定化して活性を見ることにより、シンデカンがインテグリンと相互関係を保持していることがわかった。これらの研究結果は、1)Okazakiら、J.Biol.Chem.277:37070-37078,2002、2)Makinoら、Exp.Cell Res.,277:95-106,2002、3)Katoら、Biochemistry,41:10747-10753,2002をはじめ8報に報告した。以上の研究結果は、ラミニン活性ペプチドの器官発生、神経再生、創傷治癒や血管新生などの高次生命現象に及ぼす組織特異的な役割を分子レベルで解明していくことの可能性と、組織特異的に働くラミニン活性ペプチドの医薬分野への応用の可能性を示唆するもので、今後はラミニンα1鎖、α2鎖のGドメインも同時に検討していく予定である。
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