研究概要 |
本研究室で同定した新規c-Myc結合タンパク質MM-1,AMY-1に関して以下の新知見をえた。 1.MM-1 MM-1はヒト染色体12番由来のスプライシングの違いによるMM-α,-β,γ,δとN末13アミノ酸が14番染色体由来の融合MM-1が存在し,細胞内の局在が異なっており、局在に必用なドメインを同定した。MM-1のc-Myc N末からのTIF1βを介する新規な転写抑制経路のターゲット遺伝子として癌遺伝子c-fmsを同定し詳細に解析した。更に、MM-1ノックダウン細胞によるDNAマイクロアレイ解析によりc-myc経路にあるWnt4遺伝子がMM-1のターゲット遺伝子であることも明らかとなった。更に、MM-1はCul II-Skp2-Elongin Bをc-Mycにリクルートしユビキチン化を促進するc-Myc分解を司る因子であることが明らかとなった。また、MM-1結合タンパク質としてCog4を同定した。以上より、MM-1によるc-Mycの転写抑制と分解の分子機構が明らかとなった。 2.AMY-1 AMY-1の機能解析を目的として、抗AMY-1抗体を作成しHeLa細胞における内在性AMY-1の局在を観察したところ、AMY-1は核の他、ゴルジ体にも強く局在していた。ゴルジ体におけるAMY-1結合タンパク質を得るため、AMY-1-FLAGを安定発現するCHO細胞株を作成し、AMY-1と免疫共沈するタンパク質として分子量200,190,95,78,70kDaのタンパク質を同定した。これらを質量分析法で更に解析したところ、95kDaのタンパク質はAMY-1結合タンパク質としてすでに知られているAKAP95、78kDa,70kDaについてはシャペロン分子であるGRP78,Hsc70であった。一方、200,190kDaのタンパク質はゴルジ体局在タンパク質として知られているBIG1,BIG2であった。今までの本研究室による研究からAMY-1がいくつかのAKAP(A-kinase anchoring protein)のRII-binding domainと結合することを明らかにしており、BIG2も3個のAKAP domainsを有すことからRII-binding domainを介したAMY-1の相互作用を予想され、現実にCHO,293T細胞抽出液を用いた共免疫沈降法でAMY-1とBIG2の1番目のRIIbeta結合部位との結合が確認され、BIG2とゴルジ体で共局在していた。同様にBIG1もBIG2と類似の配列を含む領域でAMY-1と結合した。BIG2はbrefeldin Aによりそのヌクレオチド交換能が阻害されるが、AMY-1はこの不活性型にも結合した。以上より、AMY-1のBIG2/BIG1複合体形成によるゴルジ体での機能が示唆された。
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