研究課題
好酸球顆粒蛋白であるeosinophil-associated ribonuclease-1(EAR-1)及びEAR-2の成熟型は、シグナルペプチドの切断位置の相違によりN末端がセリンあるいはグルタミンになる2種類が報告されている。そこでそれぞれのリコンビナント(それぞれEAR-1(S)、EAR-1(Q)及びERA-2(S)、EAR-2(Q))を作製し、その生物活性を比較した。EAR-1及びEAR-2はいずれもRNase活性を持つが、EAR-2はEAR-1よりも活性が強く、また、EAR-1(Q)及びEAR-2(Q)はそれぞれEAR-1(S)及びEAR-2(S)よりも活性が強かった。これらのRNase活性は96℃、20分の熱処理あるいはRNase阻害薬で失活した。一方、これらはほぼ同程度の抗菌活性を示し、しかも抗菌活性はRNase阻害薬では阻害されず、熱処理によって増大した。したがって、EAR-1及びEAR-2の抗菌活性はRNase活性とは無関係であることが示唆された。これらの結果から、好酸球穎粒蛋白は、気道上皮において細菌感染に対して防御的に作用している可能性が考えられた。一方、インターフェロン-γ(IFN-γ)は気道上皮細胞に接着分子ICAM-1を発現させ、白血球との相互作用を増大させて、気道上皮細胞の傷害を増強している可能性が示唆されている。そこでこのICAM-1産生誘導機序について解析した。IFN-γはSTAT1のチロシンリン酸化及びセリンリン酸化を亢進したが、このセリンリン酸化酵素については明らかにされていない。種々のキナーゼ阻害薬を用いてSTAT1のセリンリン酸化酵素を解析したところ、各MAP kinase、protein kinase C及びphosphatidylinositol 3-kinaseの関与はほとんどなく、cycline-dependent kinase(CDK)が関与していることが示唆された。また、CDK阻害薬はIFN-γによるICAM-1の発現を抑制した。これらの知見は、気道上皮傷害を防止する新規治療薬の新しい作用点を示唆するものである。
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