研究概要 |
ペルオキシソームのプロテオーム解析ならびに新たに同定されたタンパク質の解析を行い、以下の新知見を得た。 1.ラット肝よりペルオキシソームを精製後、Na_2CO_3法で膜分画を調製し、ペルオキシソーム膜を構成するタンパク質の網羅的解析を行った。その結果、20種のペルオキシソーム膜タンパク質を同定した。その内、12種がペルオキシソー形成因子(Pex)、3種がABCタンパク質、2種が脂肪酸CoA合成酵素、3種がトランスポーターと推定されるタンパク質であった。また、これらタンパク質の量比も推定可能になった。主たるペルオキシソーム膜構成タンパク質の構成が初めて明らかになった。 2.昨年度、ペルオキシソームマトリックスにペルオキシソーム型Lonプロテアーゼが存在することを発見した。本年度、ヒト肝cDNAライブラリーより本遺伝子をクローニングし、大腸菌での大量精製系ならび哺乳動物細胞系を構築した。Lonプロテアーゼファミリーに属するタンパク質は、変性タンパク質を分解し、タンパク質の品質管理を担う可能性が推定されている。よって、ペルオキシソーム型lonプロテアーゼもこのような機能をもつかどうか興味深い。 3.さらに新規タンパク質として、aminoglycoside phosphotransferaseドメインをもつacyl-CoA dehaydrogenaseを発見した。本酵素がペルオキシソームの脂肪酸β酸化にどのように関与するか興味深い。また、ペルオキシソーム膜にVAMP-associated protein A,B,C、Rab2,14が存在することが明かとなった。ペルオキシソーム形成に関与する可能性が示唆される。 4.ヒトペルオキシソーム病(Zellweger syndrome、副腎白質ジストロフィー)におけるペルオキシソーム構成タンパク質の変化と病態との関連性を明らかにするため、ヒト繊維芽細胞より高純度のペルオキシソームを精製する条件を検討している。
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