研究分担者 |
染井 正徳 金沢大学, 薬学部, 教授 (20110546)
太田 哲生 金沢大学, 医学部, 助教授 (40194170)
横山 謙 科学技術振興事業団, 吉田ATPシステムプロジェクト, 研究員 (70271377)
畑中 保丸 富山医科薬科大学, 薬学部, 教授 (30111181)
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研究概要 |
V-ATPase関連受容体は,細胞の増殖・分化・細胞死に極めて重要な関与をしている。そこで、本研究においては,(1)V-ATPaseの反応機構の解明、及び(2)Bafilomycin類の一つであるConcanamycin Aの増殖阻害・NOG・細胞死誘導機構の解明を目指した。 先ず、高度高熱菌より高純度に精製したVoV1-ATPaseの遺伝子変異体を用いて、それが回転していることを示すことができた(PNAS(2003)100,2312-15)。今後、V-ATPaseの作用機構の解明を図る(横山ら)。又、V-ATPase阻害活性を殆ど低下させないConcanamycin類のphotoaffinity試薬を作することに成功した(畑中ら)。その膜不透過性を作成して検討した結果、Concanamycin類は細胞内に入ることなく、細胞膜に作用して細胞分化・細胞死(アポトーシス)を誘導することを発見した。(投稿準備中)。そこで、diazirine誘導アフィニティー・プローブを用いてBafilomycin類(実際には、Concanamycin類)結合蛋白質を同定する。阻害剤が細胞膜上の特異受容体自体に作用して分化・細胞死誘導を引き起こすならば、特異薬剤の開発に結びつくので、極めて重大な問題になる。現在、単離したV-ATPaseでは16kDaのタンパク質に結合するが、細胞ではそれ以外のタンパクにも作用するようである。現在、細胞膜上に想定される受容体を検索しているところである。プロジギオシン(Prodigiosin)誘導体について同様の実験を行い、プロジギオシンやその類似体が細胞膜に作用しているか否かを検討する予定である。細胞膜上のV-ATPaseに作用している可能性もある。更に、アンチセンス・オリゴの効果をVo(16kDa、21kDa)とV1(70kDa)とで比較した。その結果、Vo(16kDa、21kDa)プロテオリピドのアンチセンス・オリゴは細胞増殖を阻害するが、V1(70kDa)に対するアンチセンス・オリゴは細胞増殖を阻害しないことを見い出した。細胞がネクローシスを起こすためと思われる(Gene. Cell.(2003)8,501-513)。また、類似の細胞増殖阻害作用がVoに対する抗体で観察された(しかし、抗体による細胞死はアポトーシスである)。共にイミダゾールやNH_4Clで影響を受けないので、細胞内pHは無関係と考えられる。 また、バフィロマイシン耐性細胞を見い出したが、それらの細胞も依然としてNH_4ClやクロロキンだけでなくてバフィロマイシンによってリソソームのpHは上昇した。またその他のプロジギオシン等の薬剤でアポトーシスが誘導され、細胞増殖が阻害されたので、バフィロマイシンによる細胞増殖阻害はリソソームpHの上昇が原因とは考えられない。細胞増殖阻害に関与するバフィロマイシン受容体が想定される(FEBS Lett.(2003)537,79-84)。 これら、及び新規のV-ATPase阻害剤をヌードマウスに移植した癌細胞の制癌機構を見ている所である。(染井、太田)
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