研究概要 |
組織形成因子は組織修復・再生などの医薬への応用が期待されている。FGFは細胞増殖因子、神経栄養因子、血管新生因子などとして多様な生理作用を示すともに、重要な組織形成因子であることが知られている。申請者らは組織形成因子としてのFGFに着目し、新規なFGF遺伝子を探索した。これまで9種類の新規なFGF遺伝子を発見し、その機能解析を進めてきた申請者らが発見した新規なFGFの内、FGF10,FGF18の役割を明らかにするため、FGF10,FGF18ノックアウト(KO)マウスを作成し、その表現形質を解析した。FGF10 KOマウスは四肢や肺の欠損とともに、脂肪組織の形成も著しく阻害されていた。さらに、FGF10の脂肪組織形成における役割の分子メカニズムを解明するため、FGF10KOマウスの脂肪組織における様々な遺伝子の発現様式を調べた。その結果、FGF10は脂肪細胞の分化初期に発現し、前駆脂肪細胞の増殖と分化に必要な因子であることが明らかになった。また、本研究によって、脂肪細胞の分化メカニズムはin vitroとin vivoでは異なっていることが明らかになった。一方、FGF18KOマウスは骨格の発達異常を示した。FGF18の骨・軟骨形成における役割を明らかにするため、FGF18KOマウスの骨・軟骨形成領域における様々な遺伝子発現を調べたところ、FGF18は前駆骨細胞の増殖と分化を促進させていることが明らかになった。一方、軟骨細胞に対しては、FGF18は増殖軟骨細胞の増殖を抑制し、肥大化軟骨の分化を促進していることが明らかになった。このFGF18の軟骨細胞への作用は、長管骨の初代培養系でも確認された。本研究はFGF10の脂肪組織形成因子、FGF-18の骨・軟骨組織形成因子としての役割を明らかにするとともに、その作用の分子メカニズムを明らかにした。従って、本研究は当初の研究目的をほぼ達成できたものと期待される。
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