1.GATA-4遺伝子の転写は、ラット心臓、胃、精巣でほぼ同じ領域から始まっていた。心筋細胞分化のモデル系P19.CL6細胞において、DMSO誘導時にGATA-4の転写が早期に活性化されること、GATA-4の転写には転写開始点近傍の、E-ボックス配列と2個並ぶGC-ボックス配列が大事であることがわかった。プロモーター領域をGFP遺伝子に融合してP19.C16細胞の染色体に組込むと、E-ボックス配列とGC-ボックス配列が存在する124塩基の領域のみではGFPの発現誘導には不十分で、転写開始点上流の125〜1312塩基の領域が必要と考えられた。 2.cAMP依存のGATA-6分解経路がCHO-K1細胞に備わっていることを明らかにした。GATA-6上の分解に必須な領域について検討を加え、Aキナーゼによるリン酸化部位やC末側PEST配列は関与しておらず、Aキナーゼの標的は他の細胞内蛋白である可能性が示唆された。今後、Aキナーゼ経路の新たなシグナル伝達因子が明らかになることが期待される。 3.5'側上流に翻訳開始コドンがin frameでもう一つ存在するため、通常サイズのS型と共に146アミノ酸残基分長いL型が、GATA-6 mRNAから翻訳される。L型特異的な領域の16アミノ酸残基からなる配列が無いと物理化学的性質が変化し、L型は分子サイズが予想より小さくなる。またL型は転写活性化能が高かった。L型特異的領域とどのような蛋白分子が相互作用し、複合体形成や転写制御を調節しているかが興味深い。 4.ヒト癌由来の培養細胞のGATA-6の発現を調べたところ、L型及びS型ともに翻訳されていることが明らかになった。GATA-6を介した癌細胞の増殖制御の検討が興味今後深い。
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